バレエの歴史を変えたと言われる伝説的ダンサー、ルドルフ・ヌレエフ。『愛と哀しみのボレロ』のモデルとなり、最近では羽生結弦選手を評する海外メディアが彼の名前を引き合いに出すなど、その影響は時とジャンルを超えてとどまるところを知らない。しかし、あの日、彼が異なる決断をしていれば、<伝説>になることもなく、20世紀の芸術史も今とは違っていただろう。
名前の通り芸術史に燦然と輝く活躍を見せたヌレエフの飽くなき情熱に魅せられ、構想20年を経て映画化したのは名優レイフ・ファインズ。ダイナミックで圧倒的なダンスシーンだけでなく、エルミタージュ美術館やルーブル美術館で実際に撮影するなど、本物志向で創り上げた。身に危険が迫る中、ヌレエフが人生を懸けた決断をくだす空港でのシーンは、サスペンス映画さながらの手に汗握る緊迫感に満ちている。
主演はタタール劇場の現役プリンシパル、オレグ・イヴェンコ。共演は、アデル・エグザルホプロスやラファエル・ペルソナ、そして、“バレエ界の異端児”セルゲイ・ポルーニン。芸術を愛し、踊りに人生を捧げた青年の気高く勇敢な物語が、ここに生まれた―。